Stoneの表現定理その4 Boole代数の同型
この記事は
の続きです.
今回は,Boole代数同士の同型の定義を与えます.その後,完備かつ原子的なBoole代数がベキ集合代数と同型であることを証明します.
準備
定義1.1: をそれぞれBoole代数とする. このとき,が準同型であるとは,以下を満たすことである.
特に,全単射準同型を同型という. 間に同型が存在するとき,とは同型であるといい,と表す.
よく見る同型の定義のBoole代数版です.
定義1.2: ブール代数が完備であるとは,任意のに対して,が存在することを言う. ただし,とする.
気分的には完備Boole代数は無限積,無限和を許すBoole代数です.というのも,有限集合に対しては, だったので,無限集合に対するもその拡張と見ることができるからです.実際,完備Boole代数では, 無限集合に対してもをそれぞれと書くことがあります.
上の説明からもわかる通り,有限Boole代数は完備です.また,ベキ集合代数も完備です. 逆に完備でないBoole代数の例としては,集合体(有限加法族)だが,集合体(完全加法族)でないものを考えれば良いです.こちらの記事に具体例があります.
定理
有限Boole代数やベキ集合代数は完備原子的Boole代数なのですが,実のところ完備原子的Boole代数は本質的にはベキ集合代数しかありません.
定理2.1 完備原子的Boole代数は,その原子全体の集合のベキ集合代数と同型である.
この定理を証明するため,まずいくつかの補題を示します.
補題2.2 任意のについて,が存在するとき次が成り立つ:
(1)
(2)
(3)
(1) はDe Morgan則の拡張,(2),(3)は分配法則の拡張となっています.
[証明] (1) 前半のみを示す.後半は同様に示せる.
とおく. このとき,任意のについてよりである. したがって,はの下界.
また,をの下界とすると,各について,より となる. したがって,はの上界なのでである.は任意の下界なので,となる.
(2)まず和について示す. 左辺が右辺の集合の上界であることは定義からすぐにわかるので,最小性だけ示す. をの上界であるとする.このとき,は特にの上界なのでである. また,でもあるので,となる.
次に積について示す. これも上界であることはすぐにわかるので最小性だけ示す. をの上界とすると,各について,よりである. なので,となる. このとき左辺のは任意なのでとなる. したがってとなるので,となる.
(3)は(2)と同様に示せる. q.e.d.
(1)から,Boole代数が完備であるためには,で閉じていれば十分であることがわかります. 実際,について,が存在すれば,(1)からとして与えられることがわかります. 同様に,で閉じたBoole代数も完備です. まとめると以下のようになります.
系2.3 Boole代数が完備
任意のに対してが存在
任意のに対してが存在
補題2.4 完備原子的Boole代数において,任意の元に対して, は原子 .
[証明] は定義からただちにわかる.以下, は原子 とおく. と仮定する.このとき,なので,となる原子が取れる. 一方このとき,よりとなり矛盾である. q.e.d.
補題2.5 を原子の集合とすると,.
[証明] とすると,よりである. より,あるについて,である. したがって,.逆向きの包含も同様に成り立つ q.e.d.
補題2.4,2.5は完備原子的Boole代数が原子から生成されることを示しています.そこから,完備原子的Boole代数が原子全体の集合のベキ集合代数と一致することがわかります.
定理2.1(再掲) 完備原子的Boole代数は,その原子全体の集合のベキ集合代数と同型である.
[証明] を完備原子的とし,の原子全体の集合をとする. このとき,とがにより同型になることを示す.
は明らか
を示すため,を示す. は明らか.また,についてよりなので . もしなら右辺はなので.
を示す.とすると となり矛盾するので,. 一方,である.
積については,との結果にDe Morgan則を適用すれば良い. q.e.d.
参考文献
- Logic of Mathematics: A Modern Course of Classical Logic (著: Adamowicz , Zbierski)
続きは書いたらリンクを貼ります. また,Boole代数関連のまとめです