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Stoneの表現定理その4 Boole代数の同型

この記事は

ie50.hatenablog.com

の続きです.

今回は,Boole代数同士の同型の定義を与えます.その後,完備かつ原子的なBoole代数がベキ集合代数と同型であることを証明します.

準備

定義1.1:  A,  B をそれぞれBoole代数とする. このとき, \phi: A \to Bが準同型であるとは,以下を満たすことである.

  •  \phi(x + y) =  \phi(x) + \phi(y)

  •  \phi(xy) = \phi(x) \phi(y)

  •   \phi(-x) = -\phi(x)

  • \phi(0) = 0, \phi(1) =1

特に,全単射準同型を同型という. A,B間に同型が存在するとき, A Bは同型であるといい, A \cong Bと表す.

よく見る同型の定義のBoole代数版です.

定義1.2: ブール代数 Bが完備であるとは,任意の A \subseteq Bに対して, \sup A ,\inf Aが存在することを言う. ただし, \sup \varnothing = 0, \inf \varnothing = 1とする.

気分的には完備Boole代数は無限積,無限和を許すBoole代数です.というのも,有限集合 A= \{ a_1 , \ldots, a_n \}に対しては,  \sup A= \Sigma \ A , \inf A = \Pi \ Aだったので,無限集合に対する\sup,\infもその拡張と見ることができるからです.実際,完備Boole代数では, 無限集合に対しても \sup A , \inf Aをそれぞれ \Sigma \ A, \Pi \ Aと書くことがあります.

上の説明からもわかる通り,有限Boole代数は完備です.また,ベキ集合代数も完備です. 逆に完備でないBoole代数の例としては,集合体(有限加法族)だが, \sigma-集合体(完全加法族)でないものを考えれば良いです.こちらの記事に具体例があります.

定理

有限Boole代数やベキ集合代数は完備原子的Boole代数なのですが,実のところ完備原子的Boole代数は本質的にはベキ集合代数しかありません.

定理2.1 完備原子的Boole代数は,その原子全体の集合のベキ集合代数と同型である.

この定理を証明するため,まずいくつかの補題を示します.

補題2.2 任意の a,\{a_i: i \in I\}について, \sup \{a_i: i \in I \},\inf \{a_i: i \in I \}が存在するとき次が成り立つ:

(1)   - \sup \{ a_i: i \in I \} =  \inf  \{- a_i: i \in I \} ,\ -  \inf \{ a_i: i \in I \} =  \sup \{ -a_i: i \in I \}

(2)   a+ \sup \{ a_i: i \in I \} =\sup \{a + a_i : i \in I\} ,\  a\cdot  \sup \{ a_i: i \in I \} = \sup \{a a_i : i \in I\}

(3)   a+ \inf \{ a_i: i \in I \} =\inf \{a + a_i : i \in I\} ,\  a\cdot  \inf \{ a_i: i \in I \} = \inf \{a a_i : i \in I\}

(1) はDe Morgan則の拡張,(2),(3)は分配法則の拡張となっています.

[証明] (1) 前半のみを示す.後半は同様に示せる.

 a = \sup \{a_i: i \in I\}とおく. このとき,任意の iについて a_i \leq aより -a \leq -a_iである. したがって, -a \{ -a_i: i \in I\}の下界.

また, x \{-a_i: i \in I \}の下界とすると,各 iについて, x \leq -a_iより a _i \leq -x となる. したがって, -x \{a_i: i \in I\}の上界なので  a \leq -xである. xは任意の下界なので, -a = \inf \{-a_i: i \in I\}となる.


(2)まず和について示す. 左辺が右辺の集合の上界であることは定義からすぐにわかるので,最小性だけ示す.  b \{a + a_i : i \in I\}の上界であるとする.このとき, bは特に \{a_i : i \in I\}の上界なので b \geq \sup \{a_i: i \in I\}である. また, b \geq aでもあるので, b \geq a + \sup \{a_i: i \in I\}となる.

次に積について示す. これも上界であることはすぐにわかるので最小性だけ示す.  b \{aa_i : i \in I\}の上界とすると,各 iについて, aa_i \leq bより a_i \leq b+(-a)a_iである.  (-a)a_i \leq (-a) \sup \{ a_i : i \in I\}なので, a_i \leq b+(-a)\sup\{a_i: \in I\}となる. このとき左辺のi は任意なので \sup \{a_i : i \in I\} \leq b+(-a)\sup\{a_i: \in I\}となる. したがって a\sup \{a_i :i  \in I \} \leq a b となるので, a\sup \{a_i: i \in I\} \leq bとなる.

(3)は(2)と同様に示せる. q.e.d.

(1)から,Boole代数が完備であるためには, \supで閉じていれば十分であることがわかります. 実際, A \subseteq Bについて, \sup \{-a: a \in A\}が存在すれば,(1)から \inf A = - \sup \{-a: a \in A\}として与えられることがわかります. 同様に, \infで閉じたBoole代数も完備です. まとめると以下のようになります.

系2.3 Boole代数Bが完備

 \Leftrightarrow 任意の A \subseteq Bに対して \sup Aが存在

 \Leftrightarrow 任意の A \subseteq Bに対して \inf Aが存在


補題2.4 完備原子的Boole代数において,任意の元 bに対して, b = \sup \{ a \leq b: a は原子  \}

[証明]  (\geq)は定義からただちにわかる.以下, A_b = \{ a \leq b: a は原子  \} とおく.  b \gt \sup A_bと仮定する.このとき, b - \sup A_b \neq 0なので, a \leq b - \sup A_b となる原子 a \leq bが取れる. 一方このとき, a \sup A_b = 0より a \not \in A_bとなり矛盾である. q.e.d.

補題2.5  A,A'を原子の集合とすると, \sup A = \sup A' \Rightarrow A = A'

[証明]  a \in A とすると, a \leq \sup A' より a \sup A' = aである.  a \sup A' = a \sup \{ a' : a' \in A'\} = \sup \{ aa': a' \in A'\} = a >0より,ある a' \in A'について, a=a'である. したがって, A \subseteq A'.逆向きの包含も同様に成り立つ q.e.d.


補題2.4,2.5は完備原子的Boole代数が原子から生成されることを示しています.そこから,完備原子的Boole代数が原子全体の集合のベキ集合代数と一致することがわかります.

定理2.1(再掲) 完備原子的Boole代数は,その原子全体の集合のベキ集合代数と同型である.

[証明]  Bを完備原子的とし,Bの原子全体の集合を Aとする. このとき, B \mathcal{P}(A) \phi(b) = A_bにより同型になることを示す.

  • (単射性)  b,b' \in Bについて, A_b = A_{b'}とすると,補題2.4から b = \sup A_b = \sup A_{b'} = b'

  • (全射性)  A' \subseteq Aをとると, Bの完備性から b = \sup A'が存在する.補題2.5から A' = A_bであるので,  \phi(b) = A'となる.

  •  \phi(0)= \varnothing,\phi(1)=Aは明らか

  •  \phi(b+b') = A_b \cup A_b'を示すため, A_{b+b'} = A_b \cup A_b'を示す. (\supseteq)は明らか.また, a \in A_{b+b'}について a \leq b+b'より a=ab+ab'なので  a = \sup \{ax : x \in A_b \} + \sup \{ax: x \in A_{b'} \}. もし a \not \in A_b \cup A_b'なら右辺は0なのでa \in A_b \cup A_b'

  •  \phi(-b) = A_b^cを示す.a \in  A_b \cap A_{-b}とすると  a \leq b(-b)=0となり矛盾するので,A_b \cap A_{-b}  = \varnothing. 一方,A_b \cup A_{-b} =A_{b+(-b)} = A_{1} = Aである.

  • 積については,+-の結果にDe Morgan則を適用すれば良い. q.e.d.

参考文献

  • Logic of Mathematics: A Modern Course of Classical Logic (著: Adamowicz , Zbierski)

続きは書いたらリンクを貼ります. また,Boole代数関連のまとめです