お勉強の記録

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Stoneの表現定理その3 フィルター

この記事は

ie50.hatenablog.com

の続きです.

前回は順序の性質について確認した後,原子を定義しました.

今回はフィルターという概念を導入し,その性質を確認します.

以下, BをBoole代数とします.

フィルターの定義

定義1.1  \varnothing \neq F \subseteq Bは以下の条件を満たす時に,フィルターと呼ばれる.

  1.  0 \not \in F

  2.  \forall x \in F \ \forall y \in B\ (x \leq y \Rightarrow y \in F)

  3.  \forall x,y \in F (xy \in F)

 a \gt 0に対して F_a =\{ x \in B:  a \leq x\}と定義すると F_aはフィルターになる.このフィルターを aの生成する単項フィルターという.また,単項フィルターでないフィルターを非単項フィルターという.

定義1.2  X \subseteq Bとする. Xの任意有限個の元の積が 0より大きい時, Xは有限交叉性*1を持つ,という.

定理1.3  Xが有限交叉性を持つ時, Xはフィルターへ拡大できる.

[証明] X' = \{ x_1 \cdots x_n : x_1 ,\ldots , x_n \in X , n \geq 1\}として, F=\{ y \in B: \exists x \in X' \ (x \leq y) \}とすれば,  F Xを含むフィルターである.実際,次のようにして Fがフィルターであることが確かめられる.

  1.  x  \in Fをとると,ある x_1, \ldots , x_nがあって, x_1 \cdots x_n  \leq xとなる. したがって, x \geq x_1 \cdots x_n >0である.

  2.  x  \in F , x \leq yとする. x_1 \cdots x_n  \leq xとなる x_i \in Xたちをとれば,  x_1 \cdots x_n  \leq x \leq yより y \in Fである.

  3.  x,y \in Fとする.このとき,x_1 \cdots x_n  \leq x ,y_1 \cdots y_n  \leq yとすれば,  xy \geq x_1 \cdots x_n \cdot y_1 \cdots y_nより xy \in Fである. q.e.d.


超フィルター

定義2.1 Bのフィルター全体のなかで,包含関係について極大なものを極大フィルターという.

補題2.2  \{F_i : i\in I\} をフィルターの集合として,包含関係について全順序であるとする. このとき,F= \bigcup_i F_iもフィルターである.

[証明]

  1.  F_i 0は入らないので, Fにも 0は入らない.

  2.  x \in F , x \leq yとする.このとき,あるiについて x \in F_iかつ x\leq yとなるので, y \in F_iとなる. したがって, y \in F

  3.  x,y \in Fとする.このとき,ある i, jについて x \in F_iかつ y \in F_jとなる.  \{F_i : i\in I\} は全順序なので,一般性を失わず F_i \subseteq F_jとできる.このとき, x,y \in F_jとなるので,  xy \in F_j.したがって, xy \in Fである. q.e.d.

定理2.3 任意のフィルターは極大フィルターへと拡大できる.

[証明]  F \subseteq Bをフィルターとする. \mathcal{F} を, Fを含む Bのフィルター全体とする. この時,補題から \mathcal{F}は包含関係について帰納的順序集合となるので,極大元を持つ.この極大元は,フィルター全体でも極大である q.e.d

定理1.3と定理2.3から,有限交叉性を持つ集合は極大フィルターへと拡大できることがわかります.

定義2.4 フィルター Fが, \forall x \ (x \in F \text{または} -x \in F ) を満たす時,超フィルターという.

定理2.5 フィルター Fが超フィルターであることと極大フィルターであることは同値である.

[証明]  Fを超フィルターとする. F' Fより真に大きいフィルターとすると, a\in F' \setminus Fが取れる.  Fは超フィルターなので, -a \in Fである.したがって, a(-a)=0 \in F'となり, F'がフィルターであることに反する.

逆に Fが超フィルターでないとする.このとき,ある a について, a, -a \not \in Fである. まず,この aについて, F \cup \{ a \}  F \cup \{-a \}のどちらかは有限交叉性を持つを示す. もし,どちらも有限交叉性を持たないとすると,ある x_1, \ldots , x_n , y_1, \ldots , y_m \in Fがあって,  x_1\cdots x_n \cdot a = y_1\cdots y_m \cdot (-a) =0とできる. このとき, x_1\cdots x_n \cdot y_1\cdots y_m \cdot a = x_1\cdots x_n \cdot y_1\cdots y_m \cdot (-a) =0となるが,  x_1\cdots x_n \cdot y_1\cdots y_m \cdot (a+(-a)) = x_1\cdots x_n \cdot y_1\cdots y_m  =0となり矛盾である.

いま, F \cup \{ a \}が有限交叉性を持つとすると,この集合はフィルターへと拡大できるが, a \not \in Fだったので, 得られたフィルターは Fより真に大きい.したがって, Fは極大でない, q.e.d.

定理2.6  aが原子であることと, aの生成するフィルター F_aが極大であることは同値である.

[証明]

 aが原子であるとする. b \not \in F_aについて, a \not \leq bなので ab=0. したがって, \{b\} \cup F_aを含むようなフィルターは存在しない. b \not \in F_aは任意なので, F_aは極大.

逆に, aが原子でないとすると, 0 \lt b \lt aなる bが存在する.このとき, F_b F_aより真に大きいので, F_aは極大でない. q.e.d.


参考文献

  • Logic of Mathematics: A Modern Course of Classical Logic (著: Adamowicz , Zbierski)


続きは Stoneの表現定理その3 フィルター - お勉強の記録です.また,Boole代数関連のまとめです.

*1:日本語での標準的な名前がわからなかったので,集合代数の名前を流用しました.標準的な名前とは異なる可能性があります.