お勉強の記録

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Stoneの表現定理その1 Boole代数

Boole代数の定義から始めて,Stoneの表現定理を証明します. 今回はその第一回ということで,Boole代数を定義して簡単な性質を証明します.

定義

 Bを集合として, +,\cdot B上の2項演算, - をB上の1項演算, 0,1 Bの要素とします. これらの組 \langle B,+,\cdot, - , 0, 1 \rangle が以下の条件を満たす時,この組をBoole代数といいます.

\begin{align} a + b &= b + a & a \cdot b & = b \cdot a \\ a+(b+c)&=(a+b)+c & (a \cdot b) \cdot c &= a \cdot (b \cdot c) \\ a\cdot(b+c) &= (a\cdot b) + (a \cdot c) & a+(b \cdot c) &= (a+b) \cdot ( a+c) \\ a + 0 &= a & a \cdot 1 &= a \\ a + (-a) &= 1 & a \cdot (-a) &= 0 \end{align}

 +,\cdot のことをそれぞれBoole和,Boole積と呼びます.Boole代数の話をしていることが明らかな時は単に和,積と呼ぶこともあります. また,Boole代数 \langle B,+,\cdot, - , 0, 1 \rangle について,どの演算,定数によりBoole代数であるかが明らかな場合,単に BのことをBoole代数と呼ぶことがあります.

以下,見慣れた記法にしたがって, \cdot +より結合が強いとし,また  \cdot は省略して書くことにします. たとえば ab+c (a \cdot b) +cを表します.

Boole代数のもっとも単純な例として,ベキ集合代数があります.

 Xを集合として, P(X)をそのベキ集合とします.  B = P(X)として, a+b , a\cdot b, -a ,0 ,1をそれぞれ  a\cup b, a\cap b, a^c, \varnothing, Xとみなせば,これらはBoole代数となります.

より一般に,集合体(有限加法族/集合代数)  A \subseteq P(X)も同様の演算でBoole代数となります.

他にも,  B=\{0,1\} 上で \begin{align} 0 + x &= x & 1 + x &=1 \\ 0 \cdot x &= 0 &1 \cdot x &= x\\ -x &\neq x \end{align}

とすればこれもBoole代数です.

他にもBoole代数の例はたくさんありますが,実は任意のBoole代数は,ある集合代数と同型になります. これをStoneの表現定理と言います.一連の記事で,最終的にこの定理を証明することを目標とします.

双対性

Boole代数の定義を見るとすぐにわかるのですが,BをBoole代数とした時,  \cdot +01をそれぞれ入れ替えたものも再びBoole代数となります. したがって,和について成り立つ性質は積についても成り立つし,積について成り立つ性質は和についてもなりたつことになります. Boole代数について諸々の性質を証明する際に,この事実を使うと手間を減らせます.

順序の導入

Boole代数上に二項関係 a \leq bを以下により導入します:

定義1  a \leq b :\Leftrightarrow a+b=b

Boole代数の諸性質を確認しつつ, \leqが順序であることを示します.

命題2  a+a = a, a\cdot a = a

[証明] \begin{align} a&=a+0 \\ &= a+(a (-a)) \\ &= (a+a)(a+(-a)) \\ &= (a+a)\cdot 1 = a+a \end{align}

積については双対性から従う //

命題3  a+1 =1, a \cdot 0 = 0

[証明] \begin{align} a+1 &= a+ (a+(-a)) \\ &=(a+a) +(-a) \\ &= a+(-a) =1 \end{align}

積については双対性により成立 //

命題4  a+b =b \Leftrightarrow ab=a

[証明]  (\Rightarrow) \begin{align} ab &= a(a+b) \\ &=aa+ab \\ &=a+ab \\ &=a(1+b)\\ &=a \cdot 1 = a \end{align}

(\Leftarrow)も同様 //

定義1と命題4から a \leq b \Leftrightarrow a +b = b \Leftrightarrow ab =aとなります.

定理5  \leq0を最小元,1を最大元とする順序

[証明] 反射性は命題1から従う.

反対称性: a \leq b かつ b \leq aとする. このとき, a+b = bかつ a+b = aなので a=b

推移性: a \leq bかつ b \leq cとする. このとき, \begin{align} a+c & = a + (b+c) &(\because b \leq c) \\ &= (a+b)+c \\ &=b+c& (\because a \leq b) \\ &=c &(\because b \leq c) \end{align} より a \leq cとなる.

また,命題3から 0が最小元,1が最大元となることは明らか //


--12/2 21:30追記-- 参考文献を追記しました

参考文献

  • Logic of Mathematics: A Modern Course of Classical Logic (著: Adamowicz , Zbierski)


つづきはStoneの表現定理その2 Boole代数の原子 - お勉強の記録です. また,Boole代数関連のまとめです