お勉強の記録

勉強したことを書いたりする予定

位相空間のコンパクト性の同値命題

自分向けのメモ

定理:位相空間がコンパクト \Leftrightarrow 有限交叉性を持つ閉集合族が共通部分を持つ.

[証明]

 (\Rightarrow)  X位相空間として, \mathscr{F}閉集合族とする.  \bigcap \mathscr{F} = \varnothingと仮定すると \bigcup_{F \in \mathscr{F}} F^c = X Xはコンパクトなので,有限個の F_1 ,\ldots , F_n \in \mathscr{F}により  F_1^c \cup \cdots \cup  F_n^c = Xとなる. このとき F_1  \cap \cdots \cap F_n = \varnothingなので, \mathscr{F}は有限交叉性を持たない.

 (\Leftarrow)  \mathscr{U} Xの開集合族として,その任意の有限部分が Xを被覆しないとする. このとき, \{ U^c : U \in \mathscr{U} \} は有限交叉性を持つ閉集合族なので,共通部分を持つ. したがって, \mathscr{U} Xを被覆しない. q.e.d.

Boole代数雑記

自分あてのメモ

定理:Boole代数が無限であることと非単項超フィルターを持つことは同値

まず,以下の補題を示す.

補題1:atomic無限Boole代数のatomは無限に存在する

[証明] atomic Boole代数についてatomが有限であると仮定する. このとき,各 b \in Bは, A_b =\{ a \leq b : a \text{ is an atom } \}とすると  b = \Sigma A_bを満たす.なぜなら, b > \Sigma A_bとすると, b- \Sigma A_b > 0より  b - \Sigma A_b  \geq aなるatomが取れるからである.このとき a \not \in A_bかつ a \leq bとなり矛盾. したがって b \mapsto A_bという対応は単射なので, Bの濃度はatom全体の集合を Aとしたとき, \mathcal{P}(A)の濃度以下である. q.e.d.

[定理の証明]  Bを有限とし, FBの超フィルターとする.  Fは有限のフィルターなので \Pi F \in Fであり, F \Pi Fにより生成される. すなわち,F は単項フィルター .

 Bが無限であるとする.

 Bがatomicであるとする.このとき, A Batom全体として, -A = \{ -a : a \in A \}とする.  -Aが有限交叉性を持つことを示す.  (-a_1) \cdots (-a_n) = -(a_1 + \cdots + a_n) =0とすると,  a_1 + \cdots + a_n=1となる. このとき,補題から a_1 , \ldots, a_nと異なるatom  aをとることができるが,  a = 1a = (a_1 + \cdots + a_n)a =0となり矛盾. したがって, -Aは超フィルターへと拡大できるが,このフィルターはatomを含まないので単項でない.

また, Bがatomicでないとすると,ある xについて, a \leq xなるatomは存在しない. このとき, xから生成されるフィルターを拡大して得られる超フィルター Fは非単項である. なぜなら, Fatom  aにより生成されるとすると a \leq xとなり矛盾するからである. q.e.d.

Stoneの表現定理その2 Boole代数の原子

この記事は

ie50.hatenablog.com

の続きです.

前回はBoole代数を定義して,順序を導入しました.

今回は導入した順序を元にBoole代数の性質を確認し,Boole代数の原子を定義します.

  • 順序の性質
  • Boole代数の原子
  • 参考文献
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Stoneの表現定理その1 Boole代数

Boole代数の定義から始めて,Stoneの表現定理を証明します. 今回はその第一回ということで,Boole代数を定義して簡単な性質を証明します.

  • 定義
  • 双対性
  • 順序の導入
  • 参考文献
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端点なしの可算稠密線形順序とは,すなわち有理数上の順序

この記事は 好きな証明 Advent Calendar 2018 - Adventar の2日目の記事です.

1日目は鯵坂もっちょさんの www.ajimatics.com でした


端点なしの可算稠密線形順序は同型を除いて一意に定まります.今回はこの定理の証明を紹介したいと思います.

用語の確認

まずは用語の確認です.

  • 線形順序とは,任意の2元が比較可能な順序です.全順序とも言います.
  • 稠密順序とは,任意の x\lt yに対してあるzがあって, x\lt z\lt yとなる順序です.
  • 線形順序が端点を持たないとは,任意の xに対して,ある y,zがあって y\lt x \lt zとなることを言います.すなわち,最大元も最小元も持たない線形順序です.

ところで,稠密線形順序(Dense Linear Order)は英語の頭文字をとってDLOと呼ばれることが多いので,以下そのように書くことにします.


具体例

では,端点なしの可算DLOとしてどんなものがあるでしょうか?

すぐに出てくる例として,有理数全体に通常の順序を入れたもの (\mathbb{Q} , \lt)が挙げられます.これが端点なしの可算DLOであることはすぐに確認できますね.


定理:端点なしの可算DLOは全て同型である

[証明] (A, \lt) , (B,\lt)を端点なしの可算DLOとする. また, A = \{ a_{0}, a_{1}, \ldots \} , B= \{ b_{0}, b_{1}, \ldots \} とする.

以下のようにして, A,B \alpha, \betaにより数え上げる.

まず, \alpha_0 = a_0 \ ,\beta_0=b_0とする.
次に, \alpha_1 = a_1とする.このとき,次のように \beta_1を定める:  \alpha_0 \lt \alpha_1であれば, \beta_0 \lt b_nとなる最小のnを取り,\beta_1 = b_nとする.  \alpha_0 \gt \alpha_1の場合, \beta_0 \gt b_nとして,あとは同様である.
今度は, \beta_2 B \setminus \{\beta_0,\beta_1 \}の元で, bによる番号が最小のものとする. このとき, \beta_0,\beta_1,\beta_2の大小関係は以下の3パターンのいずれかである.

  1.  \beta_2が最小である.
  2.  \beta_2が最大である.
  3.  \beta_2\beta_0 \beta_1の間に入る.

1.の場合, \alpha_0,\alpha_1より小さい a_nのうち,番号が最小のものを取り \alpha_2 = a_nとする. 他の2パターンの場合も同様に,順序を保つように \alpha_2を定める(いずれの場合も, Aは端点なしかつ稠密なので対応する元を取ってくることができる).

以下は同様に, \alpha_{2n+1}に対して順序を保つように \beta_{2n+1}を定め, 次に \beta_{2n+2}に対して順序を保つように \alpha_{2n+2}を定める,というのを繰り返していけば良い.  \alpha_{2n+1},\beta_{2n+2}はまだ \alpha,\betaによって数え上げられていないもののうち, a,bによる番号が最小のものをとってきているので, \alpha,\betaによる数え上げが a,bによる数え上げを網羅しているのは明らかである. また,各 nに対して \{ \alpha_i : i \lt n \} \{\beta_i : i\lt n \}が同型になるように \alpha,\betaを定めたので,  A = \{\alpha_n : n \in \mathbb{N} \} B = \{\beta_n : n \in \mathbb{N} \}が同型となることも直ちに従う. //

かくして,端点なしの可算DLOは全て同型であることが示されました. 具体例のところで書いた通り,有理数上の通常の順序は端点なしの可算DLOでした.したがって,「端点なしの可算稠密線形順序とは,すなわち有理数上の順序」というわけです.


往復論法

この証明のポイントは,基準となる元をA,Bから交互にとることで, \alpha,\betaA,B全体を数え上げている,という点です. 常に片側を基準にしていると,埋め込みを構成することはできるのですが,全射になっているかどうかはわからないというわけですね.*1

このように, A,Bの両側から交互に基準を取って同型を作る方法は,往復論法(back-and-forth)と呼ばれています.数学基礎論でよく使われる手法で,上記の例に限らず,構造同士が同型であることを示すのに役立ちます.便利な手法ということで,好きな証明方法の一つです.

*1:両向きの埋め込みがあればBernsteinの定理のような感じで同型写像を作れそうな気がしないでもないですが….これについてはそのうち考えてみます.ただ,そうするよりも今回の証明の方が簡潔です